6月12日午後6時


今日はとてもたのしかった。自分のルーツを探ることも、自分と同じようなことに同じような重さで関心をもってくれる人がいることも、そのたのしさは40もの年の差を軽く超えることも、うれしい。わたしはお姉ちゃんみたいに、わたしの知らないことをたくさん教えてくれる友人がほしいのだと気付いた。いろんな人から色んなことを教えてもらってるから、とても贅沢なのだけど。師匠と呼びたいような、憧れて真似したくなるような、そんな人に出会いたい。社会に出たらきっと会えるはず。たのしみ。


懐かしい曲のワンフレーズをなんとなく口ずさんで、つられて思い出したことがある。あの子とカラオケに行くのが苦手だった。なんでかって、あの子は歌がとても上手だから。わたしは仮にもずっと軽音部で、周りに持ち上げられたおかげで、そこにプライドはあったのだけど、自分の実力は自分が一番知っていた。わたしは歌がすきで、でも下手だった。あの子はとても上手だった。音楽の歌のテスト時間も、学祭のソロでも、彼女がうたうときはいつもどきどきしていた。みんなの胸を打つ、お腹から響く声。そうだとても声の綺麗な人だった。ひどい下ネタだって、その声のおかげで品を失わずに済んでいた。
彼女の歌を聞くたびに、劣等感にまみれたし、それ以上にとても憧れた。彼女がカラオケで歌う椎名林檎は、本当に色気があった。苦手だった。でも、だいすきだった。
とても綺麗な人だった。色が白くて、ほっぺたがピンク色で、本人は嫌っていたけれどきれいな鷲鼻だった。いつだったかみんなを、それぞれ動物に例えたとき、彼女をオウムに似てるって言ったのは、そういった顔の特徴からだけじゃない。わたしにとって彼女は鳥だった。きれいな声で伸びやかに歌う鳥だった。






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