7月9日午後12時




わたしの家の窓からみえるような庭の一画には、ビンやらガラスのお皿やらが並べられている。父親がどこからともなく持ってきてもので、その中にはわたしがお土産にあげた、有馬温泉のソーダ水のビンもお行儀よく並んでいる。父はそのビンに、これまたどこから摘んできたのかわからない花を飾る。ガラスのお皿には、庭で採れた梅の実がつんである。雨水や流れ出した果汁で、日々熟していくそれらをみると、いつもあの有名な一文が浮かんでくる。季節を追って日々変化するその庭先。母はそれらを見てくすくす笑っている。芸術家であるらしい彼の美意識を、四季を慈しむその態度を、母は愛しているのかしら、と思った。そういえば若い頃の母は、タバコを咥えて絵を描く父に恋をしていたと聞いたことがある。この老いてきた二人の間にある愛情は、案外ロマンチックなのかなと、少し期待をしながら、どうして笑っているのかと尋ねた。そうすると彼女は、いっそうくすくす笑いながら、自分の巣にものを集めてくる熊みたいで変だし、あの人のごちゃごちゃなセンスを小馬鹿にしてる、と言った。でもあの花だけはかわいいね、と、父親がどこからか摘んできた一輪の花に微笑んだ。二人の間にあるものは、わたしにはまだよくわからない。やまなしがお酒になるのを、気楽に待ってみよう。



親知らず / チャットモンチー