10月24日午後10時

 
 
 
電車がすきです。乗っていることが、だいすきです。バスのような座席の電車の方がすき。近鉄奈良からたまに意味もなく500円も払って特急に乗る時間がすき。京都線のあの景色をみれるって、とても贅沢だと思います。流れていく風景ならいつまででも見ていられます。それに気分と天気にあった音楽とコーヒーがあれば、わたしはたぶん無敵です。ついでだからいうけど、近鉄で難波に向かう途中の、石切をすぎたあたりのあの景色は本当に、文明を肯定してしまうほどきれいね。今日の夕日は圧巻でした。両の手で円を作ったくらいの大きさの太陽でした。薄いオレンジの空に、ビルの影の背景だけが薄ピンクに色づいていました。甘いカクテルみたいに、とろけてしまいそうな空でした。
 
電車を外から見るのもすきです。夜の電車が一等すきです。なんでかって、きれいだったから。大きな音をたてながら、きらきら、流れていくんです。それを見つけたのは二年前の秋だったと思います。あの橋の上で見つけたんです。桂川の水辺に反射して駆け抜ける阪急電車に、心を奪われました。こんなにすてきなものがこの世にはあるのか、大真面目にそう思いました。遠くから見るのも、近くで見るのもすきです。辺り一面真っ暗なあの河川敷の、坂を登り切ったところにあるあの踏切りのけたたましい音が思い出されます。線路をまっすぐに駆け抜けるその窓からは、わたしとは一生関わらないであろう誰かが見える。さみしくって心地いい。わたしは彼をわからないし、彼はわたしをしらない。乗っている人を見送るとき、わたしはそばにいる人たちをいつもより愛おしく思えたし、誇らしい気分になれました。きれいなものが大好きです。あの人がゆってくれたあの台詞を大切にしようと思います。
 
ジョバンニはカンパネラと一緒に鉄道にのって星空の中を旅したんですよね。そんな風なこともあって最近のわたしは、本当に夜の電車が、懐かしくて、たまりません。
 
 
 
 
 
 
 Everything is wonderful / srup16g