当たり前みたいに、二度と会わない人がいる。どんどん会わなくなって、そのまま会わなくなる人がいる。二度と会いたくないし、会わない人がいる。会いたくても、二度と会えない人がいる。

死は特別なことじゃなくて、日常にあふれていて、簡単で、つまらなくて、凡庸なことだ。人身事故で誰かが死んでも、わたしは、正直迷惑だし、はやく帰りたいと思った。大雨の中、各駅停車の乗客たちは、みんな仕方ないという顔をしていた。場所が奈良と京都の間だったからか、どこかに迷い込みそうな気分だった。横に座ったご婦人と話しながら、死んでしまった誰かについて少しだけ考えた。

たくさんの後悔があって、どうしようもなさがあって、でもそれはなんてことのないことなんだけど、よくある話なんだけど、なんというか、ごちゃごちゃいうのはやめて、何が言いたいというと、
何も悲しんでなんていない嘆いてもないけど、たださみしい。結局まだ信じられてない。人が死ぬってどういうことかまだよくわかってない。あまりに凡庸でありふれているのに、ちっともわからない。この一年ですっかり元気になった。前よりもずっと健康になった。ただなにも変わらずに痛い。会いたいとかじゃない、生きててくればなんでもよかった。わたしと笑っててほしかったんじゃない、どこか遠いところでもわたしの知らない人とでいい。生きてて欲しかった。生きて、疎遠になって、結局とりたてて会わなくなるひとになってても。死なないで欲しかった。あのとき、もっとちゃんと話をきけばよかった。もっと必死に連絡をとればよかった。もっと必死にとめればよかった。生きてて欲しかったのに、ただ、それだけでよかったのに