4月20日午後12時



就活をはじめてから。

自分の長所と短所とがすんなり言えるようになった。自分もわりとそれなりに、やってきたんだなと思えるようになった。頑張ってきたと胸をはっていえるようになった。価値観が明確になった。色んな選択肢を振り返って、自分がいまの自分じゃない可能性を考えるようになった。正しかったのか、と考えてしまうこともでてきた。何かにつけて比較して相対的に自分を価値付けするようになった。のこり一年の大学生活を心底楽しもうと思った。後悔のないように勉強をしようと思った。戻りたい過去はないけれど、無性にさみしくなる夜があることに気づいた。振り返らずに進むしかないのだなと思うことがふえた。このままでいいと思えることが増えた。こつこつと努力しようと思うことが増えた。したいこと、やりたいこと、しりたいこと、たべたいもの、ききたいもの、さわりたいもの、世の中のすべてが楽しいと思えるようになった。わくわくしてとまらなくなった。はやく働きたいと思った。無駄なものにこそ価値があると思った。でもそれは、基本的なものがあってこそだと思った。わたしはなにも知らないと思った。おしゃれでかっこいい社会人になりたいと思った。買い物がすきだと気づいた。勉強と就活は両立できると知った。いままでよりももっと、必要のないものを欲しがらないようにしようと思った。スケールの大きいはなし、たとえば世界進出、とかは自分にとってリアリティがないのだと気づいた。自分の能力の限界を知った。周りにいてくれる人たちを大事にしようと思った。刑事物のちょっとした人情シーンにも、うるうるするようになった。無性にカラオケに行きたいことに気づいた。そばかすが気になるようになった。



Letter / 椎名林檎